○稲沢市中小企業振興基本条例
令和5年9月5日
条例第32号
稲沢市は、天下の奇祭として有名な「国府宮はだか祭」、晩秋にまちを黄金色に染める「祖父江のイチョウ」、近年は「織田信長公生誕の地」としても知られている。古くは、尾張国の国府が置かれるなど歴史を重ね、肥よくな土壌と温和な気候を生かし、植木や苗木の産地としても発展してきた。また、名古屋からの鉄道アクセスや交通インフラ整備等の優位性から大企業等の工場が数多く立地してきた。
中小企業は、わが国企業の大多数を占め、本市においても地域経済循環の基礎であり続けるとともに、人材育成や雇用創造で大きな役割を果たしている。近年、経済の国際化の進展、企業間競争の激化に加え、少子高齢化、人口減少、消費構造の変化等、中小企業を取り巻く環境は大きく変化しており、生産性向上、人材確保、事業承継等が大きな課題となつている。
こうした中、本市が将来にわたり持続可能なまちづくりを進めるためには、中小企業自らが創意工夫して、新しい価値を創造し、地域内再投資を行い、事業経営の安定及び向上を図るとともに、事業者、団体、市民が市に対する誇りを持ち、市と連携及び協力し、まちづくりの担い手として取り組むことが重要である。
ここに、中小企業の役割とその重要性を理解し、中小企業の振興を本市の重要な政策として位置付けるとともに、中小企業の振興を通じて地域経済の循環を促進し、稲沢市を住んでよし、働いてよし、訪れてよしの魅力あふれる豊かなまちとするため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、中小企業の振興について、基本理念を定め、市の責務及び中小企業者等の役割等を明らかにするとともに、中小企業の振興に関する施策の基本方針等を定め、これを総合的に推進することにより、地域経済の持続的な発展及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。
(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者であつて、市内に事業所を有するものをいう。
(2) 小規模企業者 中小企業者のうち、中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者をいう。
(3) 中小企業団体 商工会議所、商工会、商店街振興組合、事業協同組合、観光協会その他中小企業者を支援する事業を行う団体であつて、市内に事業所を有するものをいう。
(4) 支援機関 国又は愛知県が所管する中小企業者の支援に取り組む公的な機関であつて、愛知県内に事業所を有する法人及び中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)第31条第2項に規定する認定経営革新等支援機関であつて、市内に事業所を有するものをいう。
(5) 大企業 中小企業者以外の事業者であつて、市内に事業所を有するものをいう。
(6) 金融機関 銀行、信用金庫その他の金融業を営む者であつて、市内に事業所を有するものをいう。
(7) 教育機関 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校であつて、市内に所在するものをいう。
(8) 市民 市内に住所を有する者及び市内に通勤し、又は通学する者をいう。
(基本理念)
第3条 中小企業の振興は、次に掲げる事項を基本理念とし、これに基づき推進されなければならない。
(1) 中小企業者の創意工夫及び経営向上に対する自主的な努力が尊重されること。
(2) 中小企業者が地域経済の持続的な発展及び市民生活の向上に重要な役割を果たしていると認識すること。
(3) 経営資源(設備、技術、知識、技能その他の事業活動に活用される資源をいう。以下同じ。)の確保が困難であると認められる小規模企業者に対して、その経営の規模及び形態を勘案し、事業の持続的な発展に向けた配慮がされること。
(4) 中小企業者、市、中小企業団体、支援機関、大企業、金融機関、教育機関及び市民が相互に連携及び協力すること。
(5) 自然環境、地域産品、人材、技術その他本市が有する地域資源を総合的に活用すること。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのつとり、中小企業者の実態を的確に把握することに努めるとともに、社会経済情勢の変化に対応した、適切な中小企業の振興に関する施策を策定し、実施に努めるものとする。
2 市は、中小企業の振興に関する施策の策定及び実施に当たつては、中小企業者、中小企業団体、支援機関、大企業、金融機関、教育機関及び市民と協力して効果的に行うよう努めるものとする。
3 市は、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たつては、中小企業者の受注機会の増大に努めるものとする。
4 市は、経営資源の確保が困難であることが多い小規模企業者の事業に配慮し、必要な措置を講ずるものとする。
(中小企業者の役割)
第5条 中小企業者は、基本理念にのつとり、社会経済情勢の変化に対応して、自らの創意工夫のもと、事業計画に基づいた新たな事業展開及び販路開拓に取り組む等、自主的な経営革新、経営基盤の強化等に努めるものとする。
2 中小企業者は、自らが地域経済の基盤を形成していることを認識し、本市が有する地域資源の活用、市内での再投資並びに雇用機会の確保、人材の育成及び従業員が仕事と生活の調和を図ることができる環境の整備その他労働環境の整備に自主的に取り組むよう努めるものとする。
3 中小企業者は、地域が取り組むまちづくりの活動に積極的に貢献し、地域社会と協力することで、事業活動を通じて地域経済の持続的な発展及び市民生活の向上に寄与するよう努めるものとする。
4 中小企業者は、自らの経営力を強化するため、中小企業団体への加入又は支援機関の活用を積極的に行い、他の中小企業者、大企業、金融機関、教育機関及び市民と交流し、相互の協力によつて、一層の事業の発展に努めるものとする。
5 中小企業者は、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(中小企業団体の役割)
第6条 中小企業団体は、基本理念にのつとり、中小企業者の実態を把握し、自らの事業活動に反映するとともに、中小企業者の経営の向上、改善及び革新、中小企業団体に加入する中小企業者相互の関係強化の促進並びに他の中小企業団体との連携に努めるものとする。
2 中小企業団体は、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(支援機関の役割)
第7条 支援機関は、基本理念にのつとり、中小企業者に対し、自らの事業活動に有効な国、愛知県、市等の施策の情報を提供するとともに、多様化及び複雑化する中小企業者の経営課題に対し、課題解決に向けた事業計画の策定等の専門性の高い支援を通じ、中小企業者の経営力の強化を図り、経営革新及び創業に繋げるよう努めるものとする。
(大企業の役割)
第8条 大企業は、基本理念にのつとり、自らの事業活動において中小企業の重要性を認識し、地域経済の持続的な発展を図るため、中小企業者との連携及び協力に努めるものとする。
2 大企業は、地域社会を構成する一員として、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関の役割)
第9条 金融機関は、基本理念にのつとり、中小企業者の経営の安定化、経営革新及び経営の向上に取り組むことができるよう、中小企業者に適した円滑な資金の供給、有用な情報の提供、経営相談等の支援を行うよう努めるものとする。
2 金融機関は、市及び中小企業団体と連携し、創業、ビジネスマッチング、事業承継その他中小企業者の状況に応じた支援に努めるものとする。
(教育機関の役割)
第10条 教育機関は、基本理念にのつとり、職場体験活動等を通じたキャリア教育の推進、次世代の地域の産業経済を担う人材の育成により、中小企業者の成長及び発展に協力するよう努めるものとする。
(市民の理解及び協力)
第11条 市民は、基本理念を理解するとともに、消費者として市内において生産され、製造され、又は加工された物を消費し、市内で提供されるサービスを利用する等により、中小企業の振興が地域経済の持続的な発展及び市民生活の向上に果たす役割の重要性を理解し、中小企業者の成長及び発展に協力するよう努めるものとする。
(施策の基本方針)
第12条 市は、中小企業の振興に関する施策の策定及び実施に当たつては、次に掲げる事項を基本とする。
(1) 小規模企業者に対し、経営改善等の支援を行うこと。
(2) 中小企業者の事業の継続及び安定を図ること。
(3) 中小企業者の新事業展開及び経営革新を促進すること。
(4) 中小企業者のカーボンニュートラルの実現その他社会的課題への取組を支援すること。
(5) 創業を促進すること。
(6) 中小企業者の事業承継を支援すること。
(7) 中小企業者の人材育成を支援すること。
(8) 雇用を促進すること。
(9) 中小商業・サービス業を支援し、地域経済循環を促進すること。
(10) 中小企業者が実施する観光サービスを支援し、本市が有する地域資源を活用した観光需要を創出すること。
(11) 植木、苗木その他特色ある農産物の生産及び販売を促進すること。
(12) 前各号に掲げるもののほか、中小企業の振興に寄与すること。
(中小企業振興会議)
第13条 市は、中小企業を振興し、地域経済の持続的な発展を推進するため、稲沢市中小企業振興会議(以下「振興会議」という。)を設置する。
2 振興会議は、中小企業者及び中小企業団体の意見を聴取し、中小企業の振興に関し、計画、施策その他必要な事項を協議し、市長に意見を述べることができる。
3 振興会議の組織、構成員その他運営に関し必要な事項は、市長が別に定める。
(財政上の措置)
第14条 市は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
(施行期日)
1 この条例は、令和5年11月1日から施行する。
(稲沢市中小企業振興奨励に関する条例の廃止)
2 稲沢市中小企業振興奨励に関する条例(平成17年稲沢市条例第68号)は、廃止する。
(稲沢市中小企業振興奨励に関する条例の廃止に伴う経過措置)
3 この条例の施行の日前に廃止前の稲沢市中小企業振興奨励に関する条例第6条の規定に基づき、同条例の適用の決定をしたものについては、なお従前の例による。